読譜に挑戦 1.音名 ードレミについてー

目に見えない、かつ時間とともに過ぎ去っていってしまう音楽を、紙に書いてある情報だけで再現できるのは、ほとんど奇跡みたいなことだと思いませんか。

歴史の中で音楽を記録しようという努力と共に進化し、今から1000年近く前に、今日でも一般的に使われている楽譜の形が生み出され、長く使われ続けています。

しかし楽譜が果たした役割は音楽を記録するというだけにはとどまりません。

聴覚だけではどうしても感覚的、主観的に音楽を捉えてしまいがちですが、そこから音楽を一度切り離し、時を止め、
目に見える形にしたことで、より客観的に音楽を捉えることができ、多種多様な音楽の発展に多大な恩恵をもたらしたと言えます。

その証拠として、記譜という文化がなく、口頭や演奏を実際に聞く形で伝承されてきた民族音楽などは、
一度根付いたそのスタイルを大きくは変えることなく、今日まで受け継がれてきています。(もちろんそれにはその魅力があります!)

音楽がここまで進化してきたことに、楽譜の存在は切っても切り離せない役割を果たしてきたことは言うまでもありません。

教会で歌う聖歌の記譜に用いられた。
現在の楽譜の原型と言える、中世の楽譜であるネウマ譜。
画像はwikipediaより

楽譜には音楽の様々な情報が書き込まれています。

音が音楽となり得るのには様々な要素がありますが、楽譜にはその様々な要素についての情報がシンプルにまとめられています。

これは同時に、実は楽譜には書き込まれていない情報も沢山あるということを覚えておいてください。

それは音楽の世界の暗黙の了解として、それを見る者が知っておかなければならないのです。

その知っておくべきことなどもこのブログで必要な時に個々に説明していくつもりです。


さて、今回の本題ですが、

楽譜を読むのに先立って、音の名前について知っておかなければなりません。

音楽のことを学んだことがなくても、ドレミファソラシドというものがあるというのは知っていると思います。いわば音楽のアルファベットですね。

このドレミについてだけでも(移動ドや固定ドについてなど)詳しく語るべきことは山ほどあるのですが、今の時点で楽譜を読むこととはあまり関係なく、
ややこしくなってしまっても困るので、とりあえず今は置いておいて先に進みましょう。(別の機会にまた書きますね)

ドレミという音の呼び方はイタリア語起源なのですが、この先、音楽理論を理解する上で英語と日本語での呼び方も知っておかなければ不便なのでまとめておきます。

どうでしょう、

ラの音から見ていただくと、順に、英語ではアルファベットで”ABCDEFG”、日本語もいろは歌の最初から「いろはにほへと」と割り当てられているだけなんです。

なぜラの音からなのかと言う理由は、その起源は古いのですが、ほとんど偶然のようなものでそこにあまり大きな意味はありません。笑

英語での音名はポピュラーやジャズなどで普通に使われますし、コードやキーなどといったものを理解するときに必須なので、どの音がどのアルファベットに対応しているのかをしっかり覚えましょう。

日本語の音名は「ハ長調」や「ト音記号」などの用語に出てくるくらいだと思っていただいて構いません。

クラシックをされている方は主にドイツ語で音名を言うことが多いですが、わざわざドイツ語音名を使う必要もないのでここでは省きます。笑

さて、このドレミの並びを体にしみ込むまで覚えるのがまずとても重要なことです。

上に向かってドレミファソラシド、下に向かってドシラソファミレド

どの音からでもこの並びを瞬時に言える必要があります。

ここでは音程を付けて歌うように言う必要はありません。ただひたすらとにかく速く念仏のように唱えてください。

どこから登ろうと、ソラシドレミファ・・・、ミファソラシドレ・・・

どこから降りようと、シラソファミレド・・・、ファミレドシラソ・・・というふうに。

7つしかないし、繰り返されるだけですし、簡単ですよね!

なぜ7つしかなく、ドレミファソラシの後にまたドレミ・・・と繰り返されるのかと言うと、
「ある音」と「その上の同じ音名の音」は周波数の比が1:2になり、そのような関係の音は人間の耳には質的に同じものと感じられるからです。

この関係の音をオクターブ(Octave)と言います。

ドレミ・・・は7つの音なので、ある音から8番目の音がオクターブになります。

余談ですがOcto-は8を意味するラテン語の接頭辞です。タコ:octopus(8つの足)と同じ語源ですね。

さて次に、ドレミの並びをしっかり覚えたら、こちらは慣れなくて少し難しいかもしれませんが、

階段の一段飛ばしのようにドミソシレファラド・・・、下りはドラファレシソミド・・・、という1つおきの音の並びを覚えてください。

何気ないことですがとても重要で役立つので、こちらもどの音からでも瞬時に言えるようにしてください。

そして余裕があれば、2つ飛ばしの並び、ドファシミラレソド・・・、下りはドソレラミシファド・・・
も任意の音から言えるようになれば完璧です!


さて、ここからはこぼれ話になりますが、ドレミの起源についてです。

今から1000年ほど前にイタリアの音楽教師であるグイード・ダレッツォが現代の楽譜の原型となる記譜法を考案したのですが、
音楽の指導に熱心であった彼は、それまではアルファベットで音の高さを認識するしかできなかったところに、
音をドレミという呼称で呼ぶことを考案し、音の高さを実際に言いながら歌唱できるようにしました。

その際に、音の名前に採用したのが、この下の「ヨハネ賛歌:Ut queant laxis」という聖歌です。

今とは違い4本線の楽譜ですが、基本的には現代の楽譜と同じ発想で音を記録しています。

この聖歌、最初の6つのフレーズ(音楽的な1つの区切り、節)の始まりの音が、
実際に音階のCDEFGAと順番に上がっていく構成になっており、このそれぞれの音の歌詞から
Ut、Re、Mi、Fa、Sol、Laと名付けました。

後に、Utは歌う際に発音しにくいことから、主:Dominusからとって、より発音しやすいDoに代えられました。

そしてさらに後に、音階の7番目の音Siが、この曲の最後の節:Sancte Johannesの頭文字から取られました。
(当時の言語にはまだIとJの区別がなかった。)

こうしてドレミが生まれました。そう、まさに皆さんもよく知っている「ドレミの歌」の元ネタのような曲と言えますね。

しかしグイード・ダレッツォさん、現代記譜法の父であり、ドレミの父であり、音楽教育の父とも呼べる、偉大な人物ですね。

それではまた。

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